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十三機兵防衛圏

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2人のクリエイターが15年間に寄せる思いとは―― 奈須きのこ×神谷盛治 スペシャル対談の冒頭を公開!


奈須きのこ
TYPE-MOON所属のシナリオライター・小説家。現在『Fate/Grand Order』にて全体構成・シナリオ・総監督を兼任している。


神谷盛治
ヴァニラウェア有限会社代表取締役社長。ゲームデザインワーク、シナリオ、ディレクションなどを幅広く手掛けている。

15年という長い年月の間に目まぐるしく変化してきたゲーム業界。技術や環境が変わりゆくなかで、真摯にゲーム制作の最前線に立ち、数多くのユーザーを魅了し続けてきた2人が「ゲームの面白さとは何か?」というテーマを中心に熱く語り合う。「TYPE-MOON展」の「図録」に収録されているこのスペシャル対談の序盤を、TYPE-MOONさんのご許可を頂き、ここで特別公開します!

――奈須さんがヴァニラウェアの大ファンというのは、TYPE-MOONファンなら知るところです。奈須さんと神谷さんは、これまで面識はあるのですか?

奈須:初めてお会いしたのは5年くらい前でしたっけ。

神谷:そうでしたね。ちょうど自分が東京に出てきていたときに、ゲーム業界の人間が交流する場みたいなものが開かれていて。そこに奈須さんがいらっしゃって、お話したのが最初の出会いでした。

奈須:神谷さんは「職人気質の怖い方」というイメージを勝手に持っていました。でも実際にお会いしたら、ステキなお兄さんだったのでビックリしました。

神谷:そんなに多くは話せなかったですけど、『十三機兵防衛圏』の企画の話を少しだけしたのは覚えています。よりにもよって文章のプロフェッショナルである方に「次の企画はシナリオで勝負しますよ」って言ってしまったんですよね。

奈須:僕は『オーディンスフィア』や『朧村正』のシナリオが大好きだったんです。とくに『オーディンスフィア』ではグウェンドリンが空から墜ちるシーンには心を揺さぶられました。なので、神谷さんがそうおっしゃられたときは「さらにシナリオが面白いゲームを作っちゃうの!?」と戦慄しましたよ。神谷さんと話したその集まりから帰ったあと、武内に「俺たちの先輩はすごい方だったぞ!」って熱く語りました。

神谷:今だから言えるんですけど、あのときの言葉は軽率だったと、作りながらずっと後悔し続けました(笑)。『十三機兵防衛圏』を作っている間、ずっと「ごめんなさい奈須さん、僕はシナリオの才能がなかったです」と思っていましたから。

奈須:いやいや、神谷さんは本当にすごい方ですよ! 『朧村正』を遊んだ際にも、時代劇を踏まえた古めかしさを残しつつ今風のテキストとして成立しているのを目にして「神谷さんってすごく教養のある方なんだな」と思っていたんですけど、執筆にあたってすごく勉強をされたというのを聞いて正直驚いたんです。プロデューサーをやりながらシナリオを書くために勉強もするって大変なことですよ。それに加えてアートまで担当されていて……もう超人じゃないですか!(笑) 僕らの世代って、知りたい情報や必要な参考資料がすぐにネット検索で見つけられるんですけど、神谷さんの世代は自分で図書館に通ったり欲しい情報へアクセスするためにも大変な労力が必要な時代で、その過程で得ているインプットの量も尋常じゃない。だから僕にとって神谷さんはとてつもない存在なんですよ。

神谷:そんなに持ち上げないでください(笑)。

奈須:今日はいかに神谷さんが素晴らしいクリエイターであるかということと、いかにヴァニラウェア作品がおもしろいかを語るつもりですので!

神谷:それはすごくありがたいんですけど、記念すべき『Fate/stay night』15周年の対談なのに、『Fate』の話がメインでなくて大丈夫ですか?

奈須:僕はTYPE-MOONの作品が好きな方は絶対ヴァニラウェアさんの作品も好きになるはずだと思っています。だからこの対談を読んだ方に、神谷さんの作品に触れてほしいんですよ。それに僕も『十三機兵防衛圏』に関して語りたいことがたくさんありますから。発売当時ちょうど『FGO』の作業で忙しかったんですけど、周りが絶賛の嵐だったので我慢できずにプレイして、2日間ノンストップでプレイしたくらいハマってしまったんです。その結果、スケジュール調整に苦心する羽目になってしまったんですが……その苦労も一切後悔しないくらい素晴らしいゲームでした。

神谷:ありがとうございます、なんだか照れくさいですね。

奈須:ヴァニラウェアさんって、世間の流行を追いかけはしないけど、結果として僕みたいに熱心なファンにとって一生の宝物になるようなゲームを作っている会社というイメージがあります。僕たちTYPE-MOONもそういうタイプの会社なので、憧れやシンパシーはありますね。僕たちと同じで「おもしろいものを作る」っていう信念を感じます。

神谷:それはありますね。業界の端っこで、小粒だけどいいものが作れればいいかなと思っています。だから『ドラゴンズクラウン』が全世界100万本の売上を記録したときは僕たちもビックリしました。

奈須:あのときは純粋にすごいなという思いとともに、「僕たちのヴァニラウェアが手の届かない存在になっちゃう~!」っていう古参ファンあるあるな焦りを感じてました(笑)。僕らが学生の頃にドハマリしていた『ダンジョンズ&ドラゴンズ』に限りなく近いコンセプトのゲームが、あのクオリティで遊べるって。そりゃ売れるよなと。そりゃ北米ではストライクだよなと。僕も夢中になって一日中プレイしました。

神谷:『ドラゴンズクラウン』のヒットはありがたかったんですけど、同時に次の作品に求められるハードルが高くなったのでキツい側面もありました。僕は自分が遊びたいゲームをずっと作り続けてきたつもりなので、売れるゲームの作り方はわからないですし。

奈須:一般人受けは未知数、でも刺さる人には最高のごちそうで宝物というのがヴァニラウェアさんの作品なんじゃないかなと思うんですよ。これからもヴァニラウェアさんにはマニアックなものをハイクオリティで作ってほしいです。

――神谷さんから見たTYPE-MOONの印象はいかがですか?

神谷:ちょうど15年ほど前、ウチのプログラマーの大西憲太郎が「おもしろい作品があるよ」って『Fate/stay night』を持ってきまして、そこで初めてTYPE-MOONさんの作品に触れました。

奈須:大西さんありがとう!

神谷:代表の武内さんと一部のスタッフさんがもともとコンパイルに所属していたという話もそのとき大西から聞かされたので、僕の中のTYPE-MOONさんの第一印象は、コンパイルからとてつもない才能を持った人たちが飛び出してきたぞって感じでした。

奈須:武内たちがコンパイルを離れて東京に戻ってきて、一緒に同人サークルをやろうと言って僕を誘ってくれたのがTYPE-MOONの始まりです。その後『stay night』を発表するときに商業化して。

神谷:『stay night』をプレイしたときは、奈須さんの圧倒的なテキストに衝撃を受けました。特に地の文の迫力がすごくて、これは勝てないなと。セリフ回しだけなら努力すればもしかしたら追いつくことができるかもしれないけど、総合力でこのテキストに匹敵するものを書くのは自分には無理だと思いました。

奈須:神谷さんにはすでにゲームのデザイン力とアート力と構成力があるのに……!?

神谷:いやいや、テキストの力って物語の説得力に結びつくじゃないですか。奈須さんの小説もいくつか読ませていただいたんですけど、自分との力の差をまざまざと見せつけられたので、僕は文字書きとしてはアマチュアでいようと思わされました。ただTYPE-MOONさんのゲーム自体は『stay night』しか触れてなくてですね……もしよければどれから触れるのがいいか教えてくれませんか。

奈須:それなら『魔法使いの夜』なんてどうでしょうか。あれは『十三機兵防衛圏』と同じくバブル後期の時期が舞台の作品なので、雰囲気が『十三機兵防衛圏』に近いと思います。

神谷:制作が終わってから聞けてよかった……制作中に聞いて触っていたら絶対に影響を受けていたと思います(笑)。さじ加減を間違えるとパロディになってしまうので、できるだけ古典以外の作品から影響を受けたくないんですよね。そうは言いつつも、電車のホームで時間がループする展開は、2011年にアメリカで作られたSF映画『ミッション: 8ミニッツ』の影響を受けているんですけど。

奈須:やっぱりそうですよね! プレイしながら、これって『ミッション: 8ミニッツ』っぽいな、と思っていました。

神谷:最近の映画なのでオマージュしたくなかったんですけど、おもしろいからと勧められて見てしまったのがダメでした。「これが完成形では?」と思ってしまって、オマージュとして昇華するのが大変でした。

(この続きは「TYPE-MOON展 図録」でご覧ください)

「TYPE-MOON展 Fate/stay night-15年の軌跡- 図録」
価格:3,960円(税込)
フルカラー234ページ/A4変形サイズ

「TYPE-MOON展 Fate/stay night-15年の軌跡-」の記録と会期ごとに寄稿された色紙の数々、展示できなかった「Fate/stay night」「Fate/hollow ataraxia」のキャラクター紹介や、奈須きのこ×神谷盛治対談や武内崇インタビュー、さらに「Fate」コミカライズ作家による合作漫画や描きおろしコミック・イラスト集などを収録した豪華内容の記念本。

ANIPLEX+にて通信販売受付中!

十三機兵防衛圏

対応機種:PlayStation®4
ジャンル:ドラマチックアドベンチャー
発売日:2019年11月28日
CERO年齢区分:C(15才以上)

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