EMPLOYEES PROFILE
A.K.
チーフプランナー
ゲーム内における日常パートの
ディレクションを担当。
Y.T.
チーフプランナー
シナリオ全般の
ディレクションを担当。
K.G.
チーフプランナー
バトル全般の
ディレクションを担当。
PROJECT STORY SECTION01

スクラップ・アンド・ビルドの美学。
つくって、壊して、磨いていく。

アトラスにおける制作チームは、それまで大きく2つに分かれていた。 『真・女神転生』シリーズを手掛ける第一プロダクションと、『ペルソナ』シリーズを手掛ける第二プロダクションだ。 看板シリーズの世界観は確立されているとしても、より多くのユーザーに作品をプレイしてもらうためには、既存IPの後継作ではない、新規の有名IPを生み出すことも必要不可欠。 そこで新たに発足したのが、第三プロダクションだ。 立ち上げメンバーとして、『ペルソナ』シリーズを担当したクリエイターたちに白羽の矢が立った。

第三プロダクションの創世期は、開発メンバーが15人程しかいませんでした。 そこから徐々に、中途採用の募集をかけるなどして、数年がかりで人を増やしていきました。 メンバーごとに元々いた制作会社が異なるので、開発を行う上でのカルチャーをすり合わせるのには、かなり時間を費やしましたね。

どの作業をどんな順序で進めていくのか。 ゲームを作るプロセスは、会社やチームによって違うと思いますが、第三プロダクションの場合は、組み上げたものを「直すこと」に多くの時間を使います。 ゲームというのは形が出来上がってこないと本当のプレイ感がなかなか分からないので、あらかじめスケジュールに余裕を持たせておいて、最終調整に最大限の時間を割く。 仕上げの丁寧さにこだわることで、上質な手触りを目指すという作戦です。 でも、これって言ってみれば開発上のマイルストーンを何度も後ろ倒ししていくやり方なので、人によっては「スケジュールのモラルが低い」とストレスを感じてしまうこともある。 「これもやり方のひとつだ」と思える人ばかりじゃない。 こういった部分は、どちらが正しいかではなく思想やカルチャーの差だと思います。 たとえ目指すべきクリエイティブが共有できていたとしても、たどり着くまでのプロセスにおいてカルチャーのギャップがあると、足並みはうまく揃いません。

第三プロダクションに中途採用で来てくださったメンバーは、「アトラスで新しいファンタジーゲームをつくりたい」という熱意を持った人たち。 私たちにとっても新たな挑戦の中、ペルソナのノウハウを押し付けたり、私たちのやり方が正しいと主張するのは違うと思っていました。 イチから一緒に考える、「ひとまずやってみよう」と一緒に進めてみる。 上手くいかなかったら、一緒に立ち止まって考える。 そうして試行錯誤する中で、少しずつ意識が統一されていく感覚がありました。

PROJECT STORY SECTION02

釘一本、コイン一枚、すべてが架空。
ファンタジーを、ゼロから構築する。

プロダクション内のカルチャーをすり合わせるところから始まったプロジェクト。 その後も、制作は試練の連続だった。 それまでの『ペルソナ』シリーズであれば、舞台が現代日本であるため、日常風景や街並みのイメージは、現実の世界をもとに共有できた。 しかしファンタジー世界の場合は、釘一本、コイン一枚まで、すべてが架空。 作品内の世界観をゼロから構築するという高い壁がプロジェクトメンバーの前に立ちはだかった。

絵空事にすぎない異世界の人や場所に説得力を持たせるためには、文化、技術、地理などの背景が透けて見える必要があり、設定を細かく詰めなければいけません。 キャラクターの言動や、その世界に存在する物の形状すべてに対して、「なぜそのように作ったか」を答えられるくらい隅々まで意図を走らせないと、なかなかそれっぽい見た目になりません。 たとえば、メタファーの世界には「鎧戦車(がいせんしゃ)」という乗り物が登場します。 その乗り物ひとつをとっても、「どんな技術で作られたのか?」「その技術があると、他にどんな物が作れるのか?」・・・など、様々な角度から問いを立てる。 それらと地道に格闘しながら、類推を働かせて世界設定を作っていき、少しでも設定に違和感を覚えれば、何が原因かを紐解いて、言語化する。 そういったサイクルをひたすら繰り返しました。

ゴールが見えず、気が遠くなることもありました。 とくにコロナ禍の時は、在宅で作業しなければならない期間が長く、チームに気軽に相談するのも難しくて。 ひとりで真っ暗闇にいるような行き詰まりを感じて、正直、「もうこの仕様はこれで良しとしたい」と妥協したくなる局面も何度かあったんです。 でもそのたびに、「このままでは楽しくならない」と、実装担当のメンバーが待ったをかけてくれたり、「面白くなるなら、もちろんやります」と、プログラマーが追加修正にも意欲的でいてくれて。 自分も立ち止まって、「そもそも、どうしたかったんだっけ?」と自身に問い直す勇気をもらえました。 紆余曲折の連続の中、みんなも不安を感じていたはずですが、一緒に手探りで正解を探し続けてくれたことが、本当に心強かったです。 本作が高い評価をいただける仕上がりにできたのは、ひとえにメンバー一人ひとりのおかげだと思っています。

PROJECT STORY SECTION03

発売当日に売上100万本達成。
肌で感じた世界の反響。

約8年もの制作期間を経て、2024年に発売を迎えた『メタファー:リファンタジオ』。 海外レビューの集積サイトである「Metacritic」では、94点のハイスコアを獲得した。

過去に経験した作品と今作での違いのひとつが、多言語対応。 様々な国や地域に同時発売ができたので、早い段階から海外ファンの大きな反響を感じられました。 明確に日本が舞台の現代劇だったペルソナとは違い、今作は海外のニーズを想像しながら作った部分も多くあったので、結果として、数々の名誉ある賞をはじめ、海外からも好評をいただけたことは非常に嬉しかったです。

今作では、多言語対応に加えて多くのプラットフォームにも同時対応しました。 開発に着手するまでは、ゲームハードをいくつか追加するだけでしょ、と甘く見ていたのですが、それが想像以上に大変で。 キーボードやマウスの操作、ディスプレイなど、一つひとつの動作を考えるのに、みんなで四苦八苦したんです。 ニューヨークでの試遊会や東京ゲームショー、アトラスフェスなど、国内外を問わず様々なイベントで、実際に遊んでくれる方と直接会えた時には、大きな達成感を感じましたね。

PROJECT STORY SECTION04

幻想世界を手がかりに。
新たな旅が、ここから始まる。

完全新規のIPを、納得のいく形で世に送りだすことに成功した本プロジェクト。 今作で得られたノウハウは、これまで現代劇に注力してきたアトラスに、新風を吹き込む貴重な機会にもなった。

今作はファンタジーだったので、現代劇には馴染まないタイプのキャラクターや、セリフまわしにも挑戦できたんですよね。 たとえば現代劇で政治的なことを言うと、政治的発言そのものになっちゃうじゃないですか。 でもファンタジーであれば、攻めたセリフも架空世界の 「寓話」になってくれる。 正直、メッセージ性にここまで踏み込んだセリフは初めて書いたな、といった感覚があります。 ゲーム後半になると、オンタイムな社会問題っぽいことを普通に話しているイベントもある(笑)。 でも絵空事の世界だから、ゲームとして見れるんですよね。 そういった意味でも、今までのアトラス作品にはない、新たな面白みを引き出せたのではと思います。

個人的には、コマンドバトルの可能性を改めて実感しました。 そもそも「コマンドバトルRPG」を作る会社は相当減ってきていて。 実際、直感的にキャラを動かす分かりやすいアクションRPGが市場の主流になっています。 でも、プレイヤーがじっくり思考して、攻撃にピシッとかっこいい絵がハマる、といったコマンドバトルRPGの良さは、まだまだ深掘りできると思っています。 今作のバトルは「ファスト&スクワッド」というアクションとコマンドバトル両方の良いところを複合したシステムになっていますが、これがゲーム体験としての面白さを下支えしてくれています。

今この時代に、どんなメッセージを込められるか。 どんな「もうひとつの人生」を体験してもらえるのか。 それらの問いに真摯に向き合うことは、これまでと変わりません。 けれど今回、幻想世界の作品に挑戦させていただいたことで得た多くの気づき、苦労、アイデアは、間違いなく私たちの糧になりました。 今作の経験を活かすことで、今後はさらに面白い作品を生み出していけると思います。