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『メガテン』に登場する悪魔

　ゲームを遊んでいる方には改めて説明するまでもありませんが、『メガテン』に登場する「悪魔」には、その性質の善悪などに関わらずさまざまな地域に伝わる神話の神々が含まれています。元より神話や宗教書などで「悪魔」と呼ばれている「サタン」や「ルシファー」は当然として、神の使徒である天使たちや、唯一神の元ネタともされるゾロアスター教の神アフラ・マズダーや日本神話の最高神アマテラス、ギリシア神話のゼウスに北欧神話のオーディン等々、神話界のそうそうたるメンバーまでもが「悪魔」と呼ばれていることには納得しづらいという方もいるかもしれません。まあ浮気者のゼウスあたりは最高神だけど「悪魔でもいいか」と言われてしまうかもしれませんが、現在でも現役の宗教で信仰される存在ならば「悪魔呼ばわりは不当」と思って当然と言えます。

　『メガテン』の考え方としては、登場する神々や悪魔たちをある意味すべて「平等」と捉えているように思えます。例えば最高神とされる存在はレベルが高かったりという差はありますが、「どの神話や宗教を優遇する」意図はまったくありません。作品によって「どこの神話から登場してる悪魔が多い」とか、「あっちの神様よりこっちの神様の方がレベルが高い」といった小さな偏りがあるのは事実ですが、登場する悪魔の選択やレベルの設定は物語の傾向やゲームバランスを見て毎回調整を行っており絶対的なものではありません。ゲームだから云々を抜きにしても、ゲーム制作者も人間ですから「どこの神様があっちの神様より偉い」なんて評価を下せるはずがないのです。

　また、特に近年の作品では物語中でもはっきりと語っていますが、ゲームに登場する悪魔たちは「その存在を知っている者の持つイメージ」が具現化した存在です。モデルとしては確かにさまざまな神話や伝承が元になっていますが、正確には「その神話を読んだ人々が受け取ったイメージ」がゲーム中の「悪魔」＝「デジタルデビル」になっています。だから、時によっては同じ名前の悪魔でも外見が違っていたりします。物語が描いている地域や時代、そこに暮らす人々の民族構成や年代平均などによって「イメージの総体」としての悪魔像が違ってくるというわけです。ことによっては、物語中の地域やその時代には神様が主役の映画やアニメが流行っていて、見かけや性格が神話中とは違っていることだってあるかもしれません。

　そこまで行くと、登場する悪魔たちは神話や伝説に描かれている存在と同じなのかという疑問が生じるかもしれません。それは、物語中世界の人々にも「神話の神様だと思う」人もいれば、「これは私の知ってる神様ではない」という人もいるはずです。イメージの総体が具現化したということは、言ってみれば「平均的イメージ」ですから、すべての人々が同じイメージを抱いてはいないわけです。ゲーム内世界ですらそうなのですから、そのゲームを遊んでいる人がどう受け止めるかはさらに千差万別でしょう。人によっては「そんな神様は名前も知らない」わけですから。

　こうした「悪魔」の定義そのものについては、制作者の間でも作品を追うごとに深められていったわけですが、物語中にも「神秘思想」の考え方を取り入れた『真・女神転生STRANGE JOURNEY』と、それにプラスアルファ要素を加えた『真・女神転生DEEP STRANGE JOURNEY』は『メガテン』の「悪魔」を物語上のテーマとしても深く語った作品です。ちょっと難しいところもあるのですが、「こういうことかも」と自分なりの解釈で受け止め、もし近くにゲーム仲魔（あえてこう表記します）がいれば、互いにどう解釈したかを話し合ってみるのもひとつの楽しみ方と言えます。この連載も、そうした「ひとりひとりの解釈」のヒントになることを目指して続けてきたのです。