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真・女神転生 DEEP STRANGE JOURNEY

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塩田信之のDSJと神話世界への旅 第3回「ゾロアスター教の女神アナーヒター」

 アヴェスター語でアナーヒターは元々は「ハラフワティー・アルドゥウィー・スーラー」と書かれていて、後ろ二つの単語で「湿った」「強い」という意味があります。「ハラフワティー」には「水を湛える」といった意味もありますが、どちらかといえば地名由来、現在のアフガニスタン南部カンダハル地方の古代ペルシア語名(ギリシア語ではアラコシア)と思われます。この地域には現在は失われた伝説の聖なる河「サラスヴァティ河」があったといわれています。

 となれば当然ながら、アナーヒターはインド神話のサラスヴァティと同一の女神であったと考えられるわけです。ちなみに「アナーヒター」という言葉は後になってつけられた「無垢な」という意味の修辞語で、いつしかこれが女神の通称になっていきました。インドには伝統的に「七母神(あるいは八母神)」と呼ばれる女神崇拝があって、もっとも古い像はインダス文明の遺跡に原型と考えられるものが残っています。さすがにその頃になると女神個々の名前まではわからないのですが、アナーヒターあるいはサラスヴァティの原型がそこに含まれている可能性は大いにあります。

 アナーヒターはその後、ペルシアがバビロニアやギリシア、そしてローマと争う歴史の中でイシュタルやアフロディーテと習合していったと、かのヘロドトスが『歴史』に記しています。イシュタルには「アナヒティッシュ」という西イランでの別名があって、この言葉が金星の呼び名でもあったことから同一視が進んだようですが、アナーヒターとアナヒティッシュがそれぞれどちらが先にそう呼ばれるようになったのかはわかりません。イシュタルはキリスト教が国教になるまでの古代ローマで非常に有力な信仰対象だったわけですから、アナーヒターがゾロアスター教で扱いが縮小された後にも広く信仰されていたことは確かなようです。

 次回は少し趣向を変えて、『真・女神転生STRANGE JOURNEY』にも登場した『メガテン』ファンには懐かしい悪魔を取り上げます。それではまた来週、お楽しみに。


塩田信之(NOBUYUKI SHIODA)

故成沢大輔氏と共に「CB’s PROJECT」を立ち上げ、『真・女神転生のすべて』『デビルサマナー ソウルハッカーズのすべて』など、これまで数多くのメガテン関連の攻略本やファンブックに携わってきたフリーライター。近著は『真・女神転生IV FINAL 公式設定資料集+神話世界への旅』(一迅社)。

※ゲームに関する記述は取材と開発スタッフによる監修に基づいています。歴史・宗教観については諸説あり、ライター個人の解釈に基づいています。

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真・女神転生 DEEP STRANGE JOURNEY

対応機種:ニンテンドー3DS
ジャンル:RPG
発売日:2017年10月26日
CERO年齢区分:C(15才以上対象)

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